先日は、「本番でギターを演奏するとき、緊張してうまく演奏できない」
という方と、レッスンをしました。
なぜか本番は、指がうまく回らない、
体にバラバラ感がある、とお悩みだったので、一緒に出だしのところの音を
どんな風に演奏しているかを見ていきました。
すると、なるべく周りの情報を遮断して目を伏せながら大急ぎでステージに上がり、
演奏がスタートすると同時に、観客や周りの人を見回してキョロキョロしだし、
一種のパニック状態が起こっているようにも見えました。
演奏するときというのは、指を動かし、リズムを取り、観客や伴奏者に目を配る、
といろんな仕事があって忙しいものです。
特に、本番の時は、会場も自分の状態も外野にいる人も、いつもとは違うので、
なおさら必要な処理情報が多いのです。
でも、音楽はステージに上がって初めて始まるのではなく、
実は自分の頭の中でずっと前に序奏が始まっています。
だから、ステージに上がる、演奏を始めるまでの動きの中でも、
自分にとって必要な情報収集ができるのではないか?
丁寧に一緒に見ていきました。
まず、演奏を始める前のちょっとした間に、
これから演奏する自分の体の状態、
例えば呼吸、心臓の音、皮膚感、などにも意識を向けながら、
少しずつ会場を見回したり、微細に全身の関節を使いながら動いていきます。
そして、今日はどんな場にしたいか、そのために何をするか、
まずは深呼吸して、体を楽に動かし、
具体的な動きを頭の中でシュミレーションし、
現場の状況も目で確認していきました。
その時は、ヨガで動きの瞑想的に動くのと同じように
呼吸しながらそれに合わせて、ただ情報を受け取っていく練習をしました。
「ドキドキしてきたなー」、「人が何人くらいいるかな」、とか、データとして
ただ情報を受け取る、ダメだとか、緊張しないようにしよう、とかいう評価を保留して
今から「やること」に本当にコミットする練習です。
それは、慣れてない人にはちょっとした脳の訓練なので
少々難儀な感じはするかもしれませんが、実際にかかる時間は数秒です。
そして、緊張を演奏のエネルギーに変えるのにとても役にたちます。
その方の場合は、まず呼吸しながら頭から体をひねりあし、股関節を意識してもらいました。
そして、目でステージや周りの様子を確認しながら、体でリズムを取り、
頭の中で演奏してもらいました。
すると、「わっ、なんだか上手く行っちゃいました!」
と本人もびっくりされたようです。
「観客をじゃがいもだと思おう!」
という指導が時々あるみたいですが、
実際には観客はじゃがいもではないので、
大人の奏者さんには、あまり演奏の役には立たない可能性が高いです。
それより、あるがままのステージでの現実が自分の役に立てられることを知り、
恐怖を乗り越える経験を重ねていく、
そんな丁寧で繊細な練習の方が、きっとのぞむ演奏に近く道だと
私は思っているところです。
あなたの力を120%本番で発揮するために♩