先日は、歌手の方が、レッスンに来てくださいました。
「今度、友人の結婚式でみんなで歌うのですが、
自分のソロパートの出だしで、緊張して声が震えるんです。」
とおっしゃるので、早速、聞かせてもらいました。
すると、歌い出しのときに、
胸を少しそらせて、股関節を前にだして、
お腹とあしにちからが入れ、結果、少し顎が引かれる動きが見え、
確かに、出てきた声が少し震えるのがわかりました。
観察したことを順を追っていくと「声の震え」は、
思ったこと→動き→結果(声の震え)の順で起こる、
つまり何か、思ったことや動いた結果が現れているのだな、
ということがよくわかりました。
さて、そこで教師として提案できることはいくつかあります。
例えばまずは起こった現象に着目して、
1.顎を引くのをやめてもらう。
2.脚に力をいれるのを抜いてもらう
3.胸をそらせたり、お腹に力を入れるのをやめてもらう。
こんな提案もできるのですが、
「やめる」「抜く」などをやってみようとすることは、
実はあまり緊張には、役に立たないことが多いのです。
なぜなら、やめることは、「歌う」ということや「表現する」「伝える」
ということに直接役立つ、動きではないからです。
そもそも、緊張しているのには、理由があります。
例えば「人に見られて怖い」と思っていたら、ある意味、
それに抵抗している動きが1~3で緊張として現れている可能性が高く、
それをやめても、気持ちを抑えているとまた別のことが現れてくるだけです。
身体はもっとシンプルに「やること、できること」を求めています。
そのためには、自分は怖い、と思っている、どきどきしてきている、
ということを認めるプロセスも必要です。
そのエネルギーを、自分が今からやることに使うぞ!という決意もいります。
自分がみんなに注目されていると、歌い始めは
ドキドキする気持ちがよくわかります。
ドキドキは、いわば必要なエネルギーが体の中からあがってきているからですが、
さらにそれを抑えようとしたり、ないこととするとより緊張現象が起こるのです。
認めたうえで、さらになぜこの場に立っているか、思い出し、
また歌うという行動を全身で選択する必要があります。
この時は、生徒さんにもう少し状況を聞いてみました。
すると長年お付き合いのある親友の結婚式で、「友人にありがとう、おめでとう、
お伝えたいから歌うことにした」ということが明らかになりました。
そこで、改めて、ステージに向かうときから、
自分がなぜそこに立つに至ったのかを思い、
前に向かって歩くことに集中しながら、
観客を自分の歌に招待して、
こころの中で「ありがとう、おめでとう!」と言ってもらいました。
すると、声の震えは収まり
「不思議なくらい落ち着きました」
という感想をもらいました。
本人もあまりの変化に少しきょとん、としている様子でした。
ステージの上では、いつもと違う状況が沢山あります。
会場も広いし、自分の状態も違う。
そんなときも、実は「自分がなんのために、今から歌うのか」
に立ち戻ることが、最終的に身体を動かしてくれる、
最後は、伝えたい「思い」なんだな、と
あらためて思ったところです。
あなたの力を120%本番で発揮するために♩
「音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク1day講座」
~舞台袖でできるヨガと呼吸法~
お申し込みはお早めに!